会長からのメッセージ (2017.4.25)



会長就任のご挨拶


河 合 武 司

公益社団法人日本油化学会会長・東京理科大学教授







   この度、第63回定時総会の折に開催された理事会で平成29年度の会長を仰せつかりました。身に余る大役ですが、伝統ある日本油化学会の発展に貢献できるように尽力する所存です。本会は油脂・脂質、界面活性剤およびそれらの関連物質を様々なアプローチで取り扱っている研究者・技術者のネットワーク組織であり、産官学の学際的な人材から構成されているのが特長です。つまり本会は、最先端の機能性材料から生活の質的向上を目指した日用品や健康維持の食品開発までの幅広い研究の"種"や"問題解決のヒント"を得る機会を提供できる組織です。

   本会員の専門は油脂分野と界面分野に大別することができますが、会員が本会を有効活用するためには有機的なネットワークが構築されていることが重要です。現在、専門部会がその中心的な役割を果たしていますが、油脂分野と界面分野の繋がりが弱いように思います。両分野の関係は太いパイプで繋がっている車の両輪というよりは、少し機能不全を起こした右脳と左脳のような関係と思います。つまり、普段はそれぞれ独自の活動を通して油化学の発展に貢献し、両分野の有機的な繋がりが生じるのは主として支部活動と年会くらいで、両分野の間には薄い壁があるように見受けられます。私自身、反省を含めて過去から現在を振り返ってみると、油脂分野を意識したのは、フレシュマンセミナー用教科書の編集、支部のセミナー企画や年会のプログラム編成などに関わった時と非常に限定されています。そこで会長として、本会をさらに魅力的な交流の場とするために、両分野の交流を促すような仕組み作りに取り組んでいきたいと考えています。 

   日本油化学会の状況を概観すると、年会や支部・専門部会活動などの研究・人的交流、フレシュマンセミナー等の学術振興・普及活動などは会員皆様方の積極的な貢献によって概ね順調です。しかし、運営委員長として昨年度6月号の本誌巻頭言でもお知らせ致しましたように、会員減少を主因とする恒常的な赤字のために財政的にたいへん不安定な状況です。この状況から脱却するために、産業技術総合研究所 北本大先生に将来構想委員会 委員長をお願いして、日本油化学会の成長戦略を練って頂きました。その総括は定時総会の際に「日本油化学会の持続的な発展に向けての提言」として報告して頂きました。

   将来構想委員会では、2000年に「ミレニアム委員会」から答申された内容 "本会の活性化に必要な諸施策" の検証からスタートし、本会の体制・活動について総括的に議論を交わされたと伺っています。日本油化学会の位置づけを「オレオサイエンスを切り拓き、快適生活を支える科学者と技術者の交差点」という分かりやすいキャッチフレーズで表現し、さらに日本油化学会の再生に向けた改革案・強化策について焦点を絞って提案して頂きました。いくつかの提案の中でも「会員数の増強より、まず年会参加者数の増強を図る」という方針を改革の柱に据えることが重要であるとの助言を頂いています。そこで、本年度発足させた年会改革推進委員会(委員長:新運営委員長 (慶應義塾大学)朝倉浩一先生)で年会改革の戦術を立てて頂き、随時実行に移し3年程度で完了させたいと考えています。本年度の年会が東京理科大学の神楽坂キャンパスで第2回アジアオレオサイエンス会議と同時開催することは、前々号の巻頭言で酒井秀樹先生(東京理科大学)からご案内がありました。多くの会員の方が年会を盛り上げて頂くことが改革の第一歩ですので、是非ともご参加下さいますようお願い申し上げます。

   さて、会長として心がけたいことは、これまで築き挙げてきた伝統と歴代会長の意志をできるだけ継続できるように努めることです。しかし、将来構想委員会の提言をご覧頂ければわかりますが、本会が置かれている現状は既存の枠組みにとらわれず、白紙の状況で最適な方法を取捨選択していく「ゼロベース思考」を必要としていますので、これまでの慣習を断ち切る判断を迫られることも十分に予想されます。その際には何卒ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

   堅苦しいことを述べてきましたが、本来私はそのようなタイプではありません。また油化学自体もフレンドリーな集まりですので、肩の力を抜いて、上記のことに取り組んで参りますので、ご支援の程どうぞ宜しくお願い致します。






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会長からのメッセージ (2016.1.1)



新年のご挨拶


宮 下 和 夫

公益社団法人日本油化学会会長・北海道大学教授







   皆様、新年明けましておめでとうございます。旧年中は、日本油化学会に対して多大なご支援をいただきましたことを、会を代表して心より御礼申し上げます。今年も、油化学会の活動へのご理解と、将来に向けての忌憚の無い多くのご意見をいただければ幸いです。

   日本油化学会は今年で創立65年目を迎えますが、最近の世界情勢の変化は、過去のどの時期と比べても激しいものがあります。また、人間活動が自然環境に与える影響と経済発展の関わりも大きくクローズアップされております。こうした中、科学者、科学界、もちろん日本油化学会も、持続的で調和のとれた産業の発展に資するような技術開発を求められております。幸いにも、油化学は学際色の強い学術分野であり、化学、物理、生物といった基礎学問を自由に駆使して様々な問題の解決に挑むことができます。“油・脂質・油脂”に関わるすべての事象に関する事柄を、理学、工学、農学、薬学、医学といった様々な学問を基にしながら探究し、その結果を世の中の役に立たせることもできます。実際、これまでの油化学会の活動により、“油・脂質・油脂”の機能性、利便性、経済性が明らかになっており、これからも社会の要求に的確に答えていくことができると確信しております。 

   油化学が学際的であるのは、豊かな人間生活の創出にその成果を活用することを目的にしているからと考えます。油化学の活動は関連の産業の健全な発展に大きく関わっています。したがって、油化学会の活動には、研究者ばかりではなく、開発担当者、マーケティング担当者、経営者など、様々な分野や立場の方が積極的に関わることが必要かと思います。消費者のニーズ、企業の取り組み、最近の技術の発展、学問上の新知見など、多くの情報を共有することで、最も重要で価値のあるテーマが見えてきます。また、このテーマを追求していくと、“油・脂質・油脂”に関わる様々な自然現象や科学的事象の真理にも迫ることが可能となります。得られる成果は、一般社会や関連産業の要求にも応えうるものです。このような情報の共有の場が日本油化学会であると思います。

   日本油化学会では様々な場で関連の情報を提供していますが、なんといっても最も重要な情報交換の場は年会だと思います。年会で研究者がいかに魅力的で新しい話題を提供できるかが、また、より多くの企業や一般社会が年会に関心を持っていただけるかどうかが、今後の日本油化学会の発展を左右しているといっても過言ではありません。近年の会員の減少傾向に歯止めをかけるには、学会としての原点に立ち返り、年会を通じて優れた研究を間断なく公表していけるような環境づくりが必須です。そのために、年会は常に挑戦的であり続ける必要があります。日本油化学会は長い歴史を有する学会ですので、守るべき伝統もありますが、年会は最も革新的で、時代のニーズに即応していくことが大事です。こうした観点から、今年の一番の目標は年会の充実にあると考えております。この点に関する皆様からの多くのご意見を是非宜しくお願い申し上げます。

   日本油化学会が行っている活動には、学会誌や各種書籍の発行、セミナーやシンポジウムの開催、表彰など様々なものがあります。これらは日本油化学会の誇るべき財産というべきで、上手に活用することが求められております。特に、日本油化学会の公式ジャーナル、Journal of Oleo Science(JOS)は、PubMedなど主要な文献検索に収録されていること、論文が無料でダウンロードできることなど、関係する学問分野に対して強い発信力と影響力を有しています。影響力を有する国際誌を持てるのは、日本油化学会に伝統があり、先人の努力があったからです。会員の皆様、特に若い方々には、是非こうした財産を積極的に活用していただきたくお願い申し上げます。






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会長からのメッセージ (2015.5.1)



会長就任にあたってのご挨拶


宮 下 和 夫

公益社団法人日本油化学会会長・北海道大学教授







   油化学は“油脂・脂質,界面活性剤”に関わる学際色の強い学術分野であり、理学、工学、農学、薬学、医学といった様々な学問を基礎として成り立っている。そのため油化学及び油脂工業に携わる場合、油化学の学問的な“すその”の広がりや、関連する社会情勢の変化を常に念頭におきながら将来の発展を見据えていくことが求められる。幸いにも、油脂化学、界面化学、油脂製造工学、脂質生化学、脂質栄養科学、バイオテクノロジーなどの様々な分野における日々の努力により“油脂・脂質,界面活性剤”の機能性、利便性、経済性が明らかになり、関連製品が社会に広く浸透するようになっている。日本油化学会では今後も油化学の学問としての柔軟性と、対象としている素材の特異性・有益性を念頭におきながら、社会の要求に応えていく姿勢が重要と考える。

   いうまでもないが、日本油化学会の発展には大学や公的機関の研究者と企業の技術者・開発担当者との連携が欠かせない。このためのツールとして年会、各種セミナー、機関誌などがあり、ここで研究者がいかに魅力的で新しい話題を提供できるかが、より多くの企業や一般社会が本会に関心を持っていただけるかどうかのバロメーターになると考えている。特にアカデミアで活躍される研究者は素晴らしい研究成果を本会に発表されると共に、関連の一線の研究者に本会を紹介していただけたら幸いである。近年の会員の減少傾向に歯止めをかけるには、学会としての原点に立ち返り、学会誌や年会を通じて優れた研究を間断なく公表していけるような環境づくりが重要と認識している。油化学に関連する様々な分野の研究者や技術者が一堂に集まり、最新の研究や技術開発に関する意見交換を行い、その輪をさらに広げていけるような場を充実させたいと考えている。

   ところで、油化学の分野で優れた研究とはどんなものであろうか?異論のあることを承知で言えば、この分野の研究の優劣は、専門分野からの評価のみならず、一般社会や関連産業の関心度あるいは研究の応用範囲の広さなどを主な尺度にすべきと答えたい。“油脂・脂質,界面活性剤”に関わる様々な自然現象や科学的事象の追求により、科学者は新たな知見を得ることができる。このときの大きな喜びは科学者であれば誰でも容易に想像できるが、その成果の発展性や、発展させるための工夫に思いをめぐらせることもまた重要である。このような創意工夫には異なる分野からの助言や研究者同士の忌憚のない意見交換が必須であり、そのために油化学会を活用していただけたら幸いである。

   学会誌、特に魅力的な国際誌を発行している学会に対する海外からの注目度は高い。日本油化学会の公式ジャーナル、Journal of Oleo Science(JOS)は、インパクトファクターが投稿するのに満足な数値を維持していること、PubMedなど主要な文献検索に収録されていること、論文が無料でダウンロードできることなど、関係する学問分野に対して強い発信力と影響力を有している。このようなジャーナルを持つ国内学会はそう多くは無く、国際誌としての確固たる地位を築いていただいた先人に心からの敬意を表したい。この財産を上手に活用して、油化学の成果を内外にアピールしていくことにより、学会のステータスをさらに向上させたいと考えている。それにはできるだけ多くの優れた論文をJOSに掲載することが重要である。今、世界は油化学に何を求めているのか?“油脂・脂質,界面活性剤”にまだ使える新機能はあるのか?それはどんな分野で役に立つのか?国際化がますます進む中、こうした疑問に常に目や耳を傾け、学会としての感性を研ぎ澄ましていくことも必要である。油化学関連の2雑誌(J. Am. Oil Chem. Soc.とEur. J. Lipid Sci. Tech.)がいずれも、油脂を表す言葉としてOilとLipidを用いたの対し、Oleoを使った“Journal of Oleo Science”では、油化学分野での新たな概念や魅力をアピールしたいとの願いも込められていると思う。皆さんの研究成果をJOSに積極的に発表していただき、これにより、日本油化学会がこの分野でのリーダーシップをとっていければと願っている。