会長からのメッセージ (2018.1.1)



新年のご挨拶


河 合 武 司

公益社団法人日本油化学会会長・東京理科大学教授





   新年、あけましておめでとうございます。日本油化学会がさらに発展できるように本年も尽力致しますので、会員の皆様には引き続きご協力をお願い申し上げます。

   昨年度の学会活動や理事会で決断した内容を振り返ってみますと、まず頭に浮かぶのは本年度から年会費を値上げしたことです。たいへん心苦しい決定でしたが、既刊の巻頭言等でお伝えしました脆弱化した財務体質の改善策ということでご理解をお願い致しました。もう一つは、本会の最も重要な活動である年会を強化するために、年会改革推進委員会を発足させたことです。委員長の朝倉浩一教授(慶應大学)がリーダーシップを発揮され、委員会を精力的に運営されています。本年中に改革案の骨子を固め、来年度の年会から実践して頂けると伺っています。 

   第56回年会と第2回アジアオレオサイエンス会議との共同開催も強く印象に残っています。参加費が通常の年会より高額であるにもかかわらず、国内外から予想以上の参加者を得たことは実行委員長の一人として非常にうれしくもあり、また随分と安堵したことを覚えています。財務的な負担を軽減した国際会議のあり方として提示できたことはよかったと思っています。

   さて、本年の重要な活動に目を向けてみますと、筆頭は神戸学院大学の戸谷永生教授を中心に準備を進めて頂いております第57回年会の開催です。会員の皆様の参加によって成功裏に終わることを願っています。また本年初頭には、総務委員会の精力的な努力により学会ホームページがリニューアルされます。外部への情報発信力の強化、さらに会員への情報提供の充実が実現されます。2021年の第60回年会や2022年の創立70周年などの立案も本年度の重要な課題です。これらの記念行事につきましてご意見やご提案がありましたら、是非、理事会メンバーにお申出下さい。

   これまでの運営委員会や理事会の議論は、毎年度の決まった議案を除くと、財務状況とその改善策に多くの時間を費やしてきました。本会の生き残り戦略を策定する喫緊の課題であったため、避けては通れない議論でした。新年ですので、少し夢を語りたいと思います。年会改革推進委員会の改革案よって年会が、研究者や学生の学問的な探究心を誘起し、より活発な学術的な議論の場に生まれ変わることを期待しています。また桑田事務局長にお願いしている年会への事務局のサポート体制が強化され、実行委員会は年会の企画だけに集中できる体制が構築できることを思い描いています。さらに財務体質や会員減少などの問題がなくなり、理事会での議論は学術的な活動や広報活動の策定などに時間を割き、オレオサイエンスの発展のみに専念できる従来の日本油化学会に早く復帰させることが私の夢です。

   昨秋、学会でカトマンズを訪れました。エクスカーションで会場からバスで12km離れた古都バクタプルを訪れました。信号がないために大渋滞で到着に約1時間かかりました。古都の街中はじっとりと湿った土の香りがしました。東京に住むようになって、すっかり忘れていた実家の北側の細い路地で子供時代に嗅いだ臭(匂いではなく)でした。また時間の流れも緩やかで、まさにいつまでも遊んでいた子供時代の時間感覚でした。このような空間に触れたことで、本年は研究にしても学内業務や学会活動にしても少し腰を落ち着けて取り組むように心がけたいと思いました。したがいまして、日本油化学会の運営もじっくりと構えて進めて参りたいと考えておりますので、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。






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会長からのメッセージ (2017.4.25)



会長就任のご挨拶


河 合 武 司

公益社団法人日本油化学会会長・東京理科大学教授





   この度、第63回定時総会の折に開催された理事会で平成29年度の会長を仰せつかりました。身に余る大役ですが、伝統ある日本油化学会の発展に貢献できるように尽力する所存です。本会は油脂・脂質、界面活性剤およびそれらの関連物質を様々なアプローチで取り扱っている研究者・技術者のネットワーク組織であり、産官学の学際的な人材から構成されているのが特長です。つまり本会は、最先端の機能性材料から生活の質的向上を目指した日用品や健康維持の食品開発までの幅広い研究の"種"や"問題解決のヒント"を得る機会を提供できる組織です。

   本会員の専門は油脂分野と界面分野に大別することができますが、会員が本会を有効活用するためには有機的なネットワークが構築されていることが重要です。現在、専門部会がその中心的な役割を果たしていますが、油脂分野と界面分野の繋がりが弱いように思います。両分野の関係は太いパイプで繋がっている車の両輪というよりは、少し機能不全を起こした右脳と左脳のような関係と思います。つまり、普段はそれぞれ独自の活動を通して油化学の発展に貢献し、両分野の有機的な繋がりが生じるのは主として支部活動と年会くらいで、両分野の間には薄い壁があるように見受けられます。私自身、反省を含めて過去から現在を振り返ってみると、油脂分野を意識したのは、フレシュマンセミナー用教科書の編集、支部のセミナー企画や年会のプログラム編成などに関わった時と非常に限定されています。そこで会長として、本会をさらに魅力的な交流の場とするために、両分野の交流を促すような仕組み作りに取り組んでいきたいと考えています。 

   日本油化学会の状況を概観すると、年会や支部・専門部会活動などの研究・人的交流、フレシュマンセミナー等の学術振興・普及活動などは会員皆様方の積極的な貢献によって概ね順調です。しかし、運営委員長として昨年度6月号の本誌巻頭言でもお知らせ致しましたように、会員減少を主因とする恒常的な赤字のために財政的にたいへん不安定な状況です。この状況から脱却するために、産業技術総合研究所 北本大先生に将来構想委員会 委員長をお願いして、日本油化学会の成長戦略を練って頂きました。その総括は定時総会の際に「日本油化学会の持続的な発展に向けての提言」として報告して頂きました。

   将来構想委員会では、2000年に「ミレニアム委員会」から答申された内容 "本会の活性化に必要な諸施策" の検証からスタートし、本会の体制・活動について総括的に議論を交わされたと伺っています。日本油化学会の位置づけを「オレオサイエンスを切り拓き、快適生活を支える科学者と技術者の交差点」という分かりやすいキャッチフレーズで表現し、さらに日本油化学会の再生に向けた改革案・強化策について焦点を絞って提案して頂きました。いくつかの提案の中でも「会員数の増強より、まず年会参加者数の増強を図る」という方針を改革の柱に据えることが重要であるとの助言を頂いています。そこで、本年度発足させた年会改革推進委員会(委員長:新運営委員長 (慶應義塾大学)朝倉浩一先生)で年会改革の戦術を立てて頂き、随時実行に移し3年程度で完了させたいと考えています。本年度の年会が東京理科大学の神楽坂キャンパスで第2回アジアオレオサイエンス会議と同時開催することは、前々号の巻頭言で酒井秀樹先生(東京理科大学)からご案内がありました。多くの会員の方が年会を盛り上げて頂くことが改革の第一歩ですので、是非ともご参加下さいますようお願い申し上げます。

   さて、会長として心がけたいことは、これまで築き挙げてきた伝統と歴代会長の意志をできるだけ継続できるように努めることです。しかし、将来構想委員会の提言をご覧頂ければわかりますが、本会が置かれている現状は既存の枠組みにとらわれず、白紙の状況で最適な方法を取捨選択していく「ゼロベース思考」を必要としていますので、これまでの慣習を断ち切る判断を迫られることも十分に予想されます。その際には何卒ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

   堅苦しいことを述べてきましたが、本来私はそのようなタイプではありません。また油化学自体もフレンドリーな集まりですので、肩の力を抜いて、上記のことに取り組んで参りますので、ご支援の程どうぞ宜しくお願い致します。






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会長からのメッセージ (2016.1.1)



新年のご挨拶


宮 下 和 夫

公益社団法人日本油化学会会長・北海道大学教授





   皆様、新年明けましておめでとうございます。旧年中は、日本油化学会に対して多大なご支援をいただきましたことを、会を代表して心より御礼申し上げます。今年も、油化学会の活動へのご理解と、将来に向けての忌憚の無い多くのご意見をいただければ幸いです。

   日本油化学会は今年で創立65年目を迎えますが、最近の世界情勢の変化は、過去のどの時期と比べても激しいものがあります。また、人間活動が自然環境に与える影響と経済発展の関わりも大きくクローズアップされております。こうした中、科学者、科学界、もちろん日本油化学会も、持続的で調和のとれた産業の発展に資するような技術開発を求められております。幸いにも、油化学は学際色の強い学術分野であり、化学、物理、生物といった基礎学問を自由に駆使して様々な問題の解決に挑むことができます。“油・脂質・油脂”に関わるすべての事象に関する事柄を、理学、工学、農学、薬学、医学といった様々な学問を基にしながら探究し、その結果を世の中の役に立たせることもできます。実際、これまでの油化学会の活動により、“油・脂質・油脂”の機能性、利便性、経済性が明らかになっており、これからも社会の要求に的確に答えていくことができると確信しております。 

   油化学が学際的であるのは、豊かな人間生活の創出にその成果を活用することを目的にしているからと考えます。油化学の活動は関連の産業の健全な発展に大きく関わっています。したがって、油化学会の活動には、研究者ばかりではなく、開発担当者、マーケティング担当者、経営者など、様々な分野や立場の方が積極的に関わることが必要かと思います。消費者のニーズ、企業の取り組み、最近の技術の発展、学問上の新知見など、多くの情報を共有することで、最も重要で価値のあるテーマが見えてきます。また、このテーマを追求していくと、“油・脂質・油脂”に関わる様々な自然現象や科学的事象の真理にも迫ることが可能となります。得られる成果は、一般社会や関連産業の要求にも応えうるものです。このような情報の共有の場が日本油化学会であると思います。

   日本油化学会では様々な場で関連の情報を提供していますが、なんといっても最も重要な情報交換の場は年会だと思います。年会で研究者がいかに魅力的で新しい話題を提供できるかが、また、より多くの企業や一般社会が年会に関心を持っていただけるかどうかが、今後の日本油化学会の発展を左右しているといっても過言ではありません。近年の会員の減少傾向に歯止めをかけるには、学会としての原点に立ち返り、年会を通じて優れた研究を間断なく公表していけるような環境づくりが必須です。そのために、年会は常に挑戦的であり続ける必要があります。日本油化学会は長い歴史を有する学会ですので、守るべき伝統もありますが、年会は最も革新的で、時代のニーズに即応していくことが大事です。こうした観点から、今年の一番の目標は年会の充実にあると考えております。この点に関する皆様からの多くのご意見を是非宜しくお願い申し上げます。

   日本油化学会が行っている活動には、学会誌や各種書籍の発行、セミナーやシンポジウムの開催、表彰など様々なものがあります。これらは日本油化学会の誇るべき財産というべきで、上手に活用することが求められております。特に、日本油化学会の公式ジャーナル、Journal of Oleo Science(JOS)は、PubMedなど主要な文献検索に収録されていること、論文が無料でダウンロードできることなど、関係する学問分野に対して強い発信力と影響力を有しています。影響力を有する国際誌を持てるのは、日本油化学会に伝統があり、先人の努力があったからです。会員の皆様、特に若い方々には、是非こうした財産を積極的に活用していただきたくお願い申し上げます。