会長からのメッセージ (2017.1.1)



新年のご挨拶


宮 下 和 夫

公益社団法人日本油化学会会長・北海道大学教授







   新年明けましておめでとうございます。日本油化学会への皆様からの多大なご支援に対し、心より御礼申し上げます。今年も、本会へのご理解と積極的な参加をいただければたいへん幸いに存じます。

   さて、ご存知のように、日本油化学会は公益社団法人ではありますが、会を支えているのは人であり、会員ひとりひとりの満足度や充実感によって、学会の発展と社会的価値の向上が可能になると考えております。私の場合、修士1年で日本油化学会に入会しましたが、そのときには、私の人生に油化学会がどのように関わってくるのかはもちろん知る由もありませんでした。その後40年近い時が流れ、油化学の会員であり続けたことを感謝しております。もちろん、社会情勢がめまぐるしく変化する中、学会の存在意義やあるべき姿は常に問われており、大学生、大学院生、大学人としての人生しか知らない私が、個人的な感慨のみで学会について論じるべきではないかもしれません。しかし、ひとりひとりの歴史が油化学会を作り上げていることも、また、大事にしていきたいと思います。 

   昨年の年頭のご挨拶の中で、「油化学は学際色の強い学術分野であり、“油・脂質・油脂”に関わる事柄を、様々な分野の力を結集して探究することで、世の中の役に立たせる学問である」と述べさせていただきました。このような学問では、得られた成果を、関連の産業の健全な発展と、それによる人類の福祉と豊かな生活に活用することが求められます。このため、油化学会の活動には、研究者ばかりではなく、開発担当者、マーケティング担当者、経営者など、様々な分野や立場の方が積極的に関わることが不可欠です。つまり、チーム「油化学」として機能することが会の発展のためにたいへん重要となってきます。会員の満足度あるいは充実感とは、チーム「油化学」を実感し、チームの目指す目標が達成できたときに得られるものかもしれません。

   再び私事で恐縮ですが、大学院生のときに参加した年会は研究の区切りとして重要なだけでなく、大学から社会をのぞくことができた点でたいへん刺激的でした。年会を通じて多くの方と知り合うことができ、特に共同研究をすることがなくても、自分が油化学という学問分野に身をおいている実感を得ました。チームの一員のような感覚かもしれません。その意味でも年会はたいへん重要な学会活動であり、学会としての原点はここにあるといえます。“油・脂質・油脂”に関わる話題はつきることはありません。常に新たな視点でこの話題をみつめることで、研究者は魅力的でわくわくするような話題を年会で提供できます。研究機関や企業などはそうした話題に注目し、協力し、一丸となって発展させていくことで、社会的な関心も高まるでしょう。年会において常に優れた研究が公表できるような環境づくりをするために何をしたらいいのか皆様と共に考えていければと思います。

   昨年の奈良での年会はたいへん盛会でした。特に懇親会はまさに油化学の原点をみたような気がしました。懐かしい顔、いつもの顔、新しい顔が親しげに歓談する風景、若い方が積極的に交流する場面も多くありました。なぜか、40年前の年会にタイムスリップするような感覚を持ったものです。マスターズクラブの会員の皆様に多数参加いただいたせいかもしれません。日本油化学会は長い歴史を有する学会です。守るべきものは守り、時代の変化に即すべきところは大胆に改革していきたいと考えております。今後もどうぞご支援のほど宜しくお願い申し上げます。






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会長からのメッセージ (2016.1.1)



新年のご挨拶


宮 下 和 夫

公益社団法人日本油化学会会長・北海道大学教授







   皆様、新年明けましておめでとうございます。旧年中は、日本油化学会に対して多大なご支援をいただきましたことを、会を代表して心より御礼申し上げます。今年も、油化学会の活動へのご理解と、将来に向けての忌憚の無い多くのご意見をいただければ幸いです。

   日本油化学会は今年で創立65年目を迎えますが、最近の世界情勢の変化は、過去のどの時期と比べても激しいものがあります。また、人間活動が自然環境に与える影響と経済発展の関わりも大きくクローズアップされております。こうした中、科学者、科学界、もちろん日本油化学会も、持続的で調和のとれた産業の発展に資するような技術開発を求められております。幸いにも、油化学は学際色の強い学術分野であり、化学、物理、生物といった基礎学問を自由に駆使して様々な問題の解決に挑むことができます。“油・脂質・油脂”に関わるすべての事象に関する事柄を、理学、工学、農学、薬学、医学といった様々な学問を基にしながら探究し、その結果を世の中の役に立たせることもできます。実際、これまでの油化学会の活動により、“油・脂質・油脂”の機能性、利便性、経済性が明らかになっており、これからも社会の要求に的確に答えていくことができると確信しております。 

   油化学が学際的であるのは、豊かな人間生活の創出にその成果を活用することを目的にしているからと考えます。油化学の活動は関連の産業の健全な発展に大きく関わっています。したがって、油化学会の活動には、研究者ばかりではなく、開発担当者、マーケティング担当者、経営者など、様々な分野や立場の方が積極的に関わることが必要かと思います。消費者のニーズ、企業の取り組み、最近の技術の発展、学問上の新知見など、多くの情報を共有することで、最も重要で価値のあるテーマが見えてきます。また、このテーマを追求していくと、“油・脂質・油脂”に関わる様々な自然現象や科学的事象の真理にも迫ることが可能となります。得られる成果は、一般社会や関連産業の要求にも応えうるものです。このような情報の共有の場が日本油化学会であると思います。

   日本油化学会では様々な場で関連の情報を提供していますが、なんといっても最も重要な情報交換の場は年会だと思います。年会で研究者がいかに魅力的で新しい話題を提供できるかが、また、より多くの企業や一般社会が年会に関心を持っていただけるかどうかが、今後の日本油化学会の発展を左右しているといっても過言ではありません。近年の会員の減少傾向に歯止めをかけるには、学会としての原点に立ち返り、年会を通じて優れた研究を間断なく公表していけるような環境づくりが必須です。そのために、年会は常に挑戦的であり続ける必要があります。日本油化学会は長い歴史を有する学会ですので、守るべき伝統もありますが、年会は最も革新的で、時代のニーズに即応していくことが大事です。こうした観点から、今年の一番の目標は年会の充実にあると考えております。この点に関する皆様からの多くのご意見を是非宜しくお願い申し上げます。

   日本油化学会が行っている活動には、学会誌や各種書籍の発行、セミナーやシンポジウムの開催、表彰など様々なものがあります。これらは日本油化学会の誇るべき財産というべきで、上手に活用することが求められております。特に、日本油化学会の公式ジャーナル、Journal of Oleo Science(JOS)は、PubMedなど主要な文献検索に収録されていること、論文が無料でダウンロードできることなど、関係する学問分野に対して強い発信力と影響力を有しています。影響力を有する国際誌を持てるのは、日本油化学会に伝統があり、先人の努力があったからです。会員の皆様、特に若い方々には、是非こうした財産を積極的に活用していただきたくお願い申し上げます。






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会長からのメッセージ (2015.5.1)



会長就任にあたってのご挨拶


宮 下 和 夫

公益社団法人日本油化学会会長・北海道大学教授







   油化学は“油脂・脂質,界面活性剤”に関わる学際色の強い学術分野であり、理学、工学、農学、薬学、医学といった様々な学問を基礎として成り立っている。そのため油化学及び油脂工業に携わる場合、油化学の学問的な“すその”の広がりや、関連する社会情勢の変化を常に念頭におきながら将来の発展を見据えていくことが求められる。幸いにも、油脂化学、界面化学、油脂製造工学、脂質生化学、脂質栄養科学、バイオテクノロジーなどの様々な分野における日々の努力により“油脂・脂質,界面活性剤”の機能性、利便性、経済性が明らかになり、関連製品が社会に広く浸透するようになっている。日本油化学会では今後も油化学の学問としての柔軟性と、対象としている素材の特異性・有益性を念頭におきながら、社会の要求に応えていく姿勢が重要と考える。

   いうまでもないが、日本油化学会の発展には大学や公的機関の研究者と企業の技術者・開発担当者との連携が欠かせない。このためのツールとして年会、各種セミナー、機関誌などがあり、ここで研究者がいかに魅力的で新しい話題を提供できるかが、より多くの企業や一般社会が本会に関心を持っていただけるかどうかのバロメーターになると考えている。特にアカデミアで活躍される研究者は素晴らしい研究成果を本会に発表されると共に、関連の一線の研究者に本会を紹介していただけたら幸いである。近年の会員の減少傾向に歯止めをかけるには、学会としての原点に立ち返り、学会誌や年会を通じて優れた研究を間断なく公表していけるような環境づくりが重要と認識している。油化学に関連する様々な分野の研究者や技術者が一堂に集まり、最新の研究や技術開発に関する意見交換を行い、その輪をさらに広げていけるような場を充実させたいと考えている。

   ところで、油化学の分野で優れた研究とはどんなものであろうか?異論のあることを承知で言えば、この分野の研究の優劣は、専門分野からの評価のみならず、一般社会や関連産業の関心度あるいは研究の応用範囲の広さなどを主な尺度にすべきと答えたい。“油脂・脂質,界面活性剤”に関わる様々な自然現象や科学的事象の追求により、科学者は新たな知見を得ることができる。このときの大きな喜びは科学者であれば誰でも容易に想像できるが、その成果の発展性や、発展させるための工夫に思いをめぐらせることもまた重要である。このような創意工夫には異なる分野からの助言や研究者同士の忌憚のない意見交換が必須であり、そのために油化学会を活用していただけたら幸いである。

   学会誌、特に魅力的な国際誌を発行している学会に対する海外からの注目度は高い。日本油化学会の公式ジャーナル、Journal of Oleo Science(JOS)は、インパクトファクターが投稿するのに満足な数値を維持していること、PubMedなど主要な文献検索に収録されていること、論文が無料でダウンロードできることなど、関係する学問分野に対して強い発信力と影響力を有している。このようなジャーナルを持つ国内学会はそう多くは無く、国際誌としての確固たる地位を築いていただいた先人に心からの敬意を表したい。この財産を上手に活用して、油化学の成果を内外にアピールしていくことにより、学会のステータスをさらに向上させたいと考えている。それにはできるだけ多くの優れた論文をJOSに掲載することが重要である。今、世界は油化学に何を求めているのか?“油脂・脂質,界面活性剤”にまだ使える新機能はあるのか?それはどんな分野で役に立つのか?国際化がますます進む中、こうした疑問に常に目や耳を傾け、学会としての感性を研ぎ澄ましていくことも必要である。油化学関連の2雑誌(J. Am. Oil Chem. Soc.とEur. J. Lipid Sci. Tech.)がいずれも、油脂を表す言葉としてOilとLipidを用いたの対し、Oleoを使った“Journal of Oleo Science”では、油化学分野での新たな概念や魅力をアピールしたいとの願いも込められていると思う。皆さんの研究成果をJOSに積極的に発表していただき、これにより、日本油化学会がこの分野でのリーダーシップをとっていければと願っている。