日本油化学会

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平成25年度 第60回界面科学部会秋季セミナー報告

第60回界面科学部会秋季セミナーを開催しました

界面科学部会副部会長 荒牧賢治(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

 界面科学部会が主催する秋季セミナーを2013年10月31日(木)〜11月1日(金)にホテル箱根アカデミーにおいて開催しました。歴史ある本セミナーも今回で60回目となりました。会場は神奈川県箱根町の芦ノ湖の湖畔にあり、非常に景色の良いところです。おおよそ例年そうですが、2日間とも秋晴れに恵まれ、非常に気持ちよい環境で行いました。参加者は企業の若手研究員を中心に60名となり、懇親会での交流も盛んに行いました。以下に紹介したように食品、医薬品、化粧品に関する講演を初日に4題、2日目に5題行い、参加者においては密度の高い情報のインプットと交流ができたと思います。以下にセミナーの概要を書きます.
 初日は13時から17時過ぎまで以下の講演とディスカッションを行いました。秋山庸子先生(大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻)には「触感の物理モデル構築とそれに基づく材料設計」の演題で、化粧品や繊維製品の触感の背後にある物理現象の仮定とその検証を行い、材料の微細構造と関係づけることで材料の触感設計を行った研究について解説していただきました。朝倉浩一先生(慶應義塾大学理工学部)には「「非平衡系の自己組織化」という概念とその表面技術への適用」の演題で、非平衡系の自己組織化についてのこれまでの研究の俯瞰とその一例であるヴィスコスフィンガリング現象を取り上げ、UVケア化粧品の性能評価法の問題点や自動車鋼板の塗装むらを題材に分かりやすくお話しいただきました。大槻理恵先生(株式会社カネボウ化粧品スキンケア研究所)には「分光反射率を用いた肌の色評価」の演題で、皮膚に入射した光が角層、表皮、真皮、皮下組織で散乱・吸収される過程を考慮し、皮膚内部色素の散乱係数と吸収係数を用いて肌の色(分光反射率)を数式化する理論と結果について紹介していただきました。草浦達也先生(花王株式会社ヒューマンヘルスケア研究センターヘルスケア食品研究所)には「『健康機能』と『 美味しさ』を両立させたヘルシアコーヒーの開発」の演題でコーヒーに含まれる内臓脂肪低減効果のあるクロロゲン酸とその効能阻害成分と雑味を取り除いた製品化について解説していただきました。このあと18時から懇親会を行い、続けて24時くらいまで二次会で交流を深め、さらには露天風呂温泉でリラックスして、一日のスケジュールを終えました。

 2日目は朝食後、8時50分から昼食を挟み、15時まで以下の講演とディスカッションを行いました。山下豊信先生(株式会社資生堂リサーチセンター)には「肌内部構造の可視化技術の開発」の演題で、非侵襲的にヒト真皮のコラーゲン線維の可視化技術を中心に、光学イメージング技術で取得できる皮膚構造について概説とその評価事例として紫外線による肌ダメージについて実例を交えて解説していただきました。佐藤浩昭先生(独立行政法人産業技術総合研究所 環境管理技術研究部門 計測技術研究グループ)には「質量分析法を用いた脂質及びポリマーの構造解析」の演題で、レーザー光によるイオン化の際に試料が破壊されにくいマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)の脂質や界面活性剤などの構造解析への適用事例についてについて紹介して頂きました。酒井健一先生(東京理科大学総合研究機構)には「実用化をめざしたジェミニ型界面活性剤の開発」の演題で、オレイン酸、アミノ酸、アミン、脂肪酸を用いた低コストで得られるジェミニ界面活性剤の表界面物性や溶液物性についてお話しいただきました。田中佳祐先生(株式会社コスモステクニカルセンター)には「化粧品への応用を目指した長鎖モノアルキルリン酸エステルのユニークな会合挙動解明」の演題で、リン脂質を単純化した異なる2種の長鎖モノアルキルリン酸エステルの合成とそのαゲルやラメラ液晶の形成についてお話しいただきました。また、筆者自身もセミナー二日目に「外相に液晶を導入したゲルエマルション- 界面活性剤と油剤の選び方、透明化手法 -」という演題で、O/W型、W/O型エマルションの外相に液晶相(LC)を導入したO/LC型、W/LC型ゲルエマルションを得るために必要な系の選択、レオロジー特性、外相と内相の屈折率を調整することにより得られる透明なゲルエマルションについて講演しました。


講義の様子


懇親会の様子