日本油化学会

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平成26年度 第61回界面科学部会秋季セミナー報告

第61回界面科学部会秋季セミナーを開催しました

界面科学部会副部会長 荒牧賢治(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

 界面科学部会が主催する秋季セミナーを2014年11月4日(火)に花王株式会社品川研修所(東京都港区)において開催しました。参加者は企業の研究員を中心に62名でした。7人の講師による講演の後、名刺交換会を行いました。参加者においては密度の高い情報のインプットと交流ができたと思います。以下に講演の概要を記します.
 最初の講演は出口茂先生(海洋研究開発機構)で「MAGIQ乳化:油/超臨界水均一溶液の相分離を利用したボトムアップのナノ乳化」と題して超臨界水の特徴の説明のあと、超臨界状態の水と油との均一溶液を室温まで急冷した際に引き起こされる相分離を利用したナノエマルション粒子のボトムアップ作製法についてお話しいただきました。次は橋崎要先生(日本大学薬学部)に「逆紐状ミセルを利用したオイルゲル化剤の可能性」と題してレシチンを主成分とする逆紐状ミセルの3次元網目構造中にオイルを保持したレシチンオルガノゲルの調製、レオロジー特性についての基礎研究と経皮吸収製剤、廃油回収利用などへの応用可能性についてお話しいただきました。お昼休みを挟んで、3題目は加藤知先生(関西学院大学理工学部)に「ヒト皮膚角層の構造と物質透過性」と題して、X線回折、電子線回折による角層細胞間に充填されている細胞間脂質層の微細構造解析についての解説と、FT-IRによるモデル角層の物質透過実験結果と合わせた物質の角層透過のメカニズムについてお話しいただきました。4題目は小椋俊彦先生(産業技術総合研究所)に「走査電子顕微鏡による新規の液中観察技術の開発」と題して、液中の生体分子、コロイド粒子の走査電子顕微鏡を用いた大気圧における電子線によるダメージを避け、金属の染色・蒸着なしでの新しい観察法についての研究成果を紹介いただきました。5題目は園田純子先生(花王株式会社)に「皮膚洗浄における泡の機能と役割」と題してキメ細かい泡による皮膚洗浄が肌に優しく、洗浄性にすぐれた洗浄法であることを界面科学的な実験と考察により明らかにした研究について解説いただき、泡沫サイズにより泡中の排液における界面活性剤組成が異なること、きめ細かい泡において油性汚れが泡沫を壊すことなく泡中へ素早く浸透していくことなどの興味深いお話しをされました。6題目は藤川晴彦先生(ライオン株式会社)に「初期ムシ歯の再石灰化とその評価技術と題して、歯垢から産生された酸が歯に浸透することにより生じる脱灰について、初期ムシ歯の状態での適切な口腔ケアにより唾液中のミネラル成分が歯の内部に再沈着する再石灰化の重要性とX線を利用したTMR法、Micro-CTや蛍光を利用したQLF法による初期ムシ歯の可視化技術についてお話しいただきました。最後は京谷大毅先生(株式会社ニコダームリサーチ)に「シワ形成に及ぼす影響について/三次元皮膚モデルを用いた有用性評価法」と題して、三次元皮膚モデルを利用した刺激物質(界面活性剤)の細胞間脂質ラメラ構造、表皮細胞、真皮繊維芽細胞への影響評価をもとにしたシワ形成メカニズムの解明と抗酸化剤の刺激による肌荒れ抑制効果についてお話しいただきました。


講義の様子